BLEデバイスのバッテリー
BLEはもともと超低消費電力かつ低コストを目標に作られた規格です。BLEの、電池への配慮を見てみます。
BLEデバイスの開発話をしていると、ときには極端に小さくしたいなど、 デバイスの大きさや形状の要望も出てくるでしょう。この時に、 回路面積は半導体素子を並べて実装可能な配置での基板面積から見積もれるでしょう。そして電池の選定です。それには、回路と電池の両方の知識が必要です。
電池の選定で肝心なのは、 連続稼働時間に必要な電池容量と、ピーク電流がとれるか、の2つです。
電池の大きさは、容量と面積の2つがあります。容量が小さくなれば、当然、 電源容量が小さくなりBLEデバイスの連続稼働時間が小さくなります。そして面積が小さくなりすぎると、BLEデバイスが無線通信をするために必要な、ピーク電流、が取れなくなり回路の正常動作に影響を与えます。
連続稼働時間の目安は、1mAhで1日から2日、と覚えておきます。
BLEによく使われるのが、CR2032という電池です。 この電池の特性を見てみます。

カタログが、 http://industrial.panasonic.com/www-cgi/jvcr13pz.cgi?J+BA+4+AAA4003+CR2032+8+JP にあります。
型番の先頭2文字は、電池の種類と形状を表します。Cは、二酸化マンガンリチウム電池(3.0 V)、形状は円形です。電池の電圧は電極材料で一意に決まります。現在の半導体製造プロセスで作られる回路の動作電圧は、1.8 ~3.3Vです。この二酸化マンガンリチウム電池の3.0Vという電圧は、その範囲にちょうどあてはまり、使い勝手がよいのです。
CR2032の容量は220mAhです。負極にリチウムを使い、容積の割に電源容量が大きいので、BLEデバイスの連続動作時間をより長くするのに、適しています。この電源容量は、大きな電流を短時間流すことを繰り返したり、動作温度が高い/低いなど、使い方と利用環境で大きく変化するので、注意します。
CR2032は、電卓やPCのバックアップ電源に使われていて、スーパーやコンビニで買える、入手性が高い電池です。入手性の高さは、BLEデバイスの使い勝手のよさにつながります。
BLEの“超低消費電力”は、電波の送受信を短時間で終わらせて、後の時間はスリープ状態で電力を使わない、間欠動作で実現しています。平均すれば“超低消費電力”、なのです。
CR2032は、標準負荷が0.2mAですが、ピーク電流は20mAほど取れます。 電波の送受信では、半導体メーカによりますがだいたい~15mAの電流が短い時間(数ミリ秒程度)流れます。標準負荷は小さいですが、ピーク電流がとれるので、BLE回路に適します。
ちなみに、CR2032は、連続して電流を流そうとしても、内部抵抗が高くなり、最大電流が電池側で制限されます。フィジカル・コンピューティングでLEDの足でボタン電池をはさんで光らせるバッジをみかけますが、電流制限抵抗がなくてもLEDが連続点灯するのは、この電池の電流制限の特性のおかげです。
電池で電気回路を年単位で連続動作させるには、電気回路自体が“超低消費電力”であることと、電池の自己放電特性が優れている、2つが必要です。自己放電は、電池メーカごとの性能、そして温度に大きく影響されます。二酸化マンガンリチウム電池の自己放電率は、目安として、1%/年以下です。