BLE モジュールリスト
モジュールは、通信機能を1つの小さい基板にまとめたもので、 製品の基本回路部分に無線通信機能を追加するときによく使われます。
高周波を送受信する回路は、特性を確保するために回路基板設計に特別の配慮がいること、また電波法や通信規格の認証が必要になります。そこで、それらをモジュールに盛り込み、そのモジュールを製品基板に搭載することで、それらの厄介な部分にかかわらず、製品が設計できるメリットが得られます。
ここでは、どのようにモジュールを選ぶかを、実際のモジュールのリストとともに解説します。次に、モジュールを使わず自社で設計するメリットはどこにあるのかを述べます。
まとめ
- iPhone 4以前の機種
- Bluetooth2.0 (クラシックBluetooth)
- MFi を取得して、クラシックBluetooth SPPで開発。
- 電池交換、もしくは充電電池内蔵が必要。連続動作時間は1週間程度。
- iPhone 4S以降の機種(Bluetooth4)
- MFi取得でSPP、またはBLEで開発。
- BLEならば、コイン型電池で1年程度の連続動作。
- Android
- Bluetooth2,3とBluetooth4を搭載したものが混在。
- クラシック Bluetooth SPPで開発
- WindowsPhone8
- Androidと同様。
ます。携帯端末として、iPhone/iPadのiOS、Android、Windows Phone8を考えます。それぞれの端末は:
- iPhone/iPad
- iPhone 4以前の機種: Bluetooth2.0 (クラシックBluetooth) → MFi を取得して、SPPで開発。
- iPhone 4S以降の機種: Bluetooth4 (クラシックBluetooth + Low Energy) → MFi取得でSPP、またはBLEで開発。
- Android → SPPで開発。
- Bluetooth2,3とBluetooth4を搭載したものが混在。
- Bluetooth Low Energyのプロトコルスタックは、ハードウェア・メーカが独自に提供している状態で、Googleから公式のLow Energyのプロトコルスタックは出ていない。
- WindowsPhone8 → SPPで開発。機種がBluetooth4ならばBLEが使える。
- Android同様、クラシックBluetoothとBluetooth4が混在。 Bluetoothを搭載したAndroid に対応
Bluetoothのモジュールには、デュアルモードとシングルモード、の2種類があります:
- デュアルモード: 超低消費電力ではないが、Bluetooth機器全てとつながる
- クラシックBluetoothとLow Energyを両方搭載したもの。両方に接続できる。
- Bluetooth対応機器全てと繋がるが、電池の交換もしくは充電が必要になる。
- シングルモード: 超低消費電力。Bluetooth 4対応機器とつながる。
- Bluetooth Low Energyのみを搭載したもの。クラシックBluetoothとは接続できない。
- コイン型電池で1年単位の動作。
BLEを選ぶべきか
機器をつなぐ無線通信規格は
- WiFi
- クラシックBluetooth
- Bluetooth Low Energy
などがあります。このほかに、ANT、ZigBeeなどのセンサーネットワーク向けに開発された規格もあります。このうちANTは、iPhone向けにドック接続のトランシーバが提供されていますから、ANT接続を求められることがあるかもしれません。
BLEを使う場面
モジュールの話に入る前に、そもそも論として、BLEを選ぶべきかどうかをみてみます。BLEを選ぶメリットは:
- iOSデバイス(iPhone4S以降)と接続できる (MFiプログラムが必須ではない)
- コイン型電池で1年以上の連続接続
です。
もしもiPhone4以前の機種と接続することを求められたら、MFiプログラムを取得して認証チップの提供の元、クラシックBluetooth シリアルポートプロファイル(以下、SPP)で、通信部分を実装します。
また、Android/WindowsPhone8との接続も求められた場合も、クラシックBluetooth SPPで接続します。Android/WindowsPhone8は、最新機種のいくつかはBluetooth4を搭載していますが、まだ多くの機種はBluetooth2もしくは3を搭載しています。接続機種を、Bluetooth4を搭載したものに限定できる場合は、BLEのみの提供も可能ですが、機種が限定できずOSの種類で接続先を指定される場合は、クラシックBluetoothを採用する他ありません。
クラシックBluetoothを採用した時点で、“電池で1年の連続動作”は得られません。1週間程度で電池がなくなるので、おそらく充電電池を採用する必要があるでしょう。これは、電源周りの設計や、電池の扱いなどの製造での管理など、様々なコストをかさ上げします。
もしも、クラシックBluetoothも使えるように、かつBLEの利点をすべて満たせと要求されたならば、その案件からは裸足で逃げ出すべきです。
シングル・モードとデュアル・モード
Bluetoothモジュールには、Low Energyのみを搭載したシングル・モードと、クラシックBluetoothとLow Energy両方を搭載したデュアル・モードのものの、2種類があります。それぞれ、用いる半導体自体が別のものです。
接続対象が、iPhone4S以降のiOSデバイスのみでよいなら、シングル・モードでよいでしょう。Android/WindowsPhone8との接続も必要ならば、デュアル・モードを選択します。
もしも、キーホルダーのような、デバイス自体が小さいことが必要な場合は、BLEだけなら、コイン型電池を使い安価に製造ができます。もしもクラシックBluetoothも求められると、充電電池を使わざるを得ず、またユーザに充電の手間をかけさせるので、そもそも論として、製品として売れるのか?という疑問が生じます。
ラジコンのような、モータのように電力消費量が大きなものが場合は、そもそも通信の超低消費電力は必要ありません。それならば、クラシックBluetoothとBLEが両方使えるデュアルモードのBluetoothモジュールを採用しても、電源周りのコストをあげることはありません。
モジュールの価格は、目安としてシングルモードで10ドル程度、デュアルモードで10~15ドル程度です。 デュアルモードは数ドルコストが高くなりがちです。
BLEを選択する場面
まとめると:
- iOSデバイスと接続する場合
- MFiプログラムに参加するほど企業が大きくない、弁護士コストが大きい場合
- 電池が、商品の価格とユーザの使い勝手を大きく決める場面
- 1次電池で充電不要で安価に、かつ電源スイッチ不要で、電池切れ=製品寿命
です。
1から設計するか、モジュールを利用するか
半導体を購入して1から設計する場合でも、モジュールを利用する場合でも、結果としてできあってくる電気回路は、基板がわかれているか否かの配置が異なるだけで、回路としては同じものになります。
モジュールは設計や許認可のコストが含まれています。目安として製造台数が1万台を超えるあたりから、自社で開発するコストメリットがでてきます。
1から設計した場合は、回路の設計自由度が得られます。モジュールは小さいとはいえ、2cm x 1cm 程度の大きさがあります。極端に小さいものが必要な場合など、任意の配置の回路基板を設計したいならば、1から設計します。
また、電波を発信するものは、他の機器の無線通信を妨害しないように、各国が定める電波法のもとで、技術適合の認証を受けなくてはなりません。その費用は、目安として:
- 日本 TELEC 80万円
- 欧米 CE 220万円
- 米国 FCC 170万円
です。さらに、製品にBluetoothのロゴを使うならば、Bluetooth対応製品として認証および製品登録が必要です。その費用は:
- Bluetooth SIG 参加 年会費 1万ドル (90万円)
- 認証テスト 5万円?
です。BLEの認証テストの費用は、クラシックBluetoothに比べれば、とても安価で済みます。ですが、SIGの企業会員の年会費が必要になります。
モジュールを利用した場合は、この電波法の許認可およびBluetoothの製品登録にかかる時間と費用を省略できます。また、モジュールは、半導体メーカが開発する開発環境をより使いやすく、より簡便になるように、モジュール提供会社が工夫をしています。それらを使うと、1から設計する場合よりも、短い時間で設計を終えることができます。
モジュールは少数多品種の製品を製造するときに、特に大きなコストのメリットが得られます。コストだけでみたときの、数量による分岐点を考えてみます。
仮に、1から設計した時の製造費用を5ドル、モジュール単価を10ドルとすれば、価格差は5ドルです。日本国内だけで販売する場合は、認証などの費用が180万円かかります。さらに欧米でも販売するならば、それは540万円になります。これから、目安として、4000個および1万個が、モジュール採用の分岐点になります。
核になるのは半導体
様々なモジュールが各社から出ていますが、 BLEに限らず、BluetoothやWiFiなど、無線通信を実現する核になるのは半導体です。 BLEの半導体を一般に広く販売しているのは、以下の2社です。この2社の半導体の製品ラインナップを見ておけば、どのような無線通信機能を実現できるか、を押さえられます:
2013年1月時点での組み合わせは:
- シングルモード(BLEのみ)
- デュアルモード(クラシックBluetooth+LE)
- ANT+デュアルモードBluetooth
- WiFi+ANT+デュアルモードBluetooth
です。BLE+ANTという組み合わせは、ありません。
Bluetooth Low EnergyとANTそれぞれの半導体のリストは以下のものになります:
Bluetooth Low Energy:
- NordicSemiconductor社
- nRF51822
- ARM Cortex-M0を内蔵したSoC。
- nRF8001/8002
- 8001はradio。8002は8001にFSMを実装しkeyfobに特化したもの。
- nRF51822
- TexusInstruments社
- CC2564 (デュアルモード)
- CC2540/41/41S
- いずれも8051互換のマイコン内蔵したSoc。
- 41は40からUSBインタフェースを省略したもの。
- 41Sは、41をradioにしたもの。外部マイコンからの利用に特化。ファーム書き換えはできないが、ペリフェラルの設定を起動時に外部から読み込むため、外部マイコンから設定を変更することはできる、みたい。
ついでにANT:
-NordicSemiconductor社 - nRF51422 - nRF24AP2-1CH/-8CH
- TexusInstruments社
- CC2570/CC2571

半導体は、高周波通信と通信制御だけを聴許するradioと呼ぶ石と、 無線通信のための高周波回路と、通信を制御するためのプロセッサまで入ったもの、に分類できます。 また、BLEでは、後者のものは、内臓マイコンにユーザのプログラムも実行できるようになっています。このようなシステム全体が1つのチップに収めたものを、システム・オン・チップ(System On Chip、以下SoC)と呼びます。
ゼロから開発する場合はSoCワンチップにして実装面積とコストを最小にできます。また自社で扱いやすいマイコンがあったり既存製品に搭載したマイコンを使いたいならば、SoCには通信の基本部分だけを処理させて、外部のマイコンに上位の通信処理を置く構成も、とれます。
これらはSoCのなかのファームウェアで実現しているので、いずれの場合でも、モジュールを利用できます。
モジュールの選定
- panasonic http://www.digikey.com/product-highlights/us/en/panasonic-bluetooth/557
- murata http://www.murata-ws.com/bt-ble.htm
- ミツミ電機 http://www.mitsumi.co.jp/latest/Catalog/hifreq/z_wave/wmlc67.html
- BlueGiga http://www.bluegiga.com/bluetooth-low-energy

- 各国の電波法の技術適合認証を取得しているか
- 米国の再輸出規制(EAR)対象か
- モジュールの単価、大きさ、内蔵アンテナの位置やコネクタの位置
- 開発環境
- 供給の安定さ
Bluegiga
- スクリプト言語の開発環境がある。
- モジュール内部のSoCのマイコンでユーザのプログラムを動かせられる。
- 開発キットは3.6万円程度
- モジュール単価は~10ドル前後