わふうの人が書いてます。

iOSアプリケーション開発、BLEのファームウェアとハードウェア試作のフリーランスエンジニア。

2016年のBLEを振り返る

これは Bluetooth Low Energy Advent Calendar 2016 の12月7日の記事です。

2016年のBLEがどうだったのかを、FacebookのWF-BTLEグループ https://www.facebook.com/groups/563064710384459/ に投稿していたものを素材にして、振り返ってみます。

規格の流れ

2015年に4.2が登場して、2月に名古屋で勉強会をしていたりしました。2016年はBT5のリリース予定が発表されています。

Bluetoothは、物理的に同じハードウェアでソフトウェア的に対応可能な変更は、4.xとマイナー番号を増やしていく、電波を出す物理層に機能が追加される大きな変更がある場合は、メジャー番号を増やしていきます。

Bluetooth5では、BLEの物理層に2Mbpsが出せる変調方式が追加されます。また、パケットにエラー訂正機能を持たせて、通信距離の延長を提供します。電波環境の良いところでは2Mbpsの通信速度を活用した通信の高速化、またエラー訂正の活用で通信速度は出せなくても、より遠くに安定した通信を提供する方向のようです。

通信の高速化と、より遠距離に届くものは、両立するものではなく、場合によって使い分けるものです。BLEはスマートホンに採用されたことで急速に普及しています。ファームウエア更新のように、ある程度まとまったデータをやり取りする場合には、通信速度の高速化がユーザ体験を良いものとするでしょう。また家電に使うような、データ量は小さいBLE本来の使いみちでは、中継装置がなくても家全体どこにいても通信ができるようになるでしょう。

またメッシュネットワークの登場も発表されています。

BLEのメッシュネットワークの仕組みは、4.1で提供されているセントラルかつペリフェラルになれる機能を利用して、ルータの役割をもたせるものです。そのルーティングなどのプロトコルはソフトウェア依存で、任意のものが載せられます。

その仕組の上で、いくつか独自のメッシュネットワークが発表されていますが、独自に実装をしても自社製品でしか使えないとなるといまいちな場合は、決め手にかけるのでしょうか。

本当にメッシュネットワークが必要なところは、さっさと使えるものを独自に実装して自社製品で字固めをしていると思うので、よく開発者がメッシュネットワークとかいうのは、大手の企業で技術動向を調査すれば仕事になるサラリーマンくらいじゃないかなと、さほど意味あるようには思えないのですが、とにかく話題の材料にはなるメッシュネットワークです。

ですからメッシュネットワークはBleutooth5の一部というわけではなく、Bluetooth5の登場タイミングで発表されるBluetoothお墨付きのプロトコル実装、というくらいに見ておけばいいのでしょう。これから発表されるメッシュネットワークは4.2のデバイスでも動作すると発表されています。

メッシュネットワークよりも、IoT系というかIPプロトコルへの対応のほうが重要だとは思うのですが、こちらはパケットさえ通ればIPはRFCか何かで実装すればよいような、Bluetoothが認証するようなものにはならないでしょうから、Bluetoothの仕組みの上で実装が色々出てくればいいだけの話なのかもしれません。

あとは、最近はスマートホンの入力がこれまでのテキスト入力から、急速に音声入力、音声操作になってきています。クラウド側で手軽に音声認識ができるようになっているので、この流れは更に強くなるでしょう。

そうなると、BLEデバイスでも、操作のために音声のコーデックが欲しくなるのですが、こちらはいつワーキンググループが仕様を固めるのか、わかりません。2~3年はかかるのかもです。

自社サービスを作りたいのならば、そんな都合は関係ないので、独自実装でさっさと作ってしまえばいいですが、iPhoneやAndroidのスマホ側に音声データを渡したい場合は、OSがサポートしてくれないと作れない、OS側も独自方式で実装するよりBluetoothの公式が出てくるなら、それを待ってしまうのかもしれないとなると、にらみ合いでロックしてしまいそうです。

企業の流れ

BLEのシングルモードの半導体を出している会社は、こんな感じです。2015年から無線の半導体会社の買収が進み、Silicon LabsはBlueGigaを、CypressはBroadcomを買収しました。またNordicは、LTEの次のIoT向け技術の半導体開発を発表しています。

  • Nordic
  • TI
  • Silicon Labs
  • Cypress (Broadcom)
  • Dialog

流れとして、家庭内での家電のようなデータ量が少ないデバイスの接続には、スマートホンとも接続できる利点だけが利点である、2.4GHzのBLEが使われていくでしょう。

ネットワークにつながることで製品となりうるような製品では、今はスマートホンをハブにする他にネットワークとつながる方法がないので、しばらくはBLEが使われるでしょう。しかしNB-IoTなどが普及すればそちらも採用していくでしょう。

また今年はSigfoxあるいはLoRaなど、半径500メートルをアンライセンスドバンドで1つの基地局でカバーできる広域の無線ネットワーク技術のデモンストレーションがニュースになっていました。どの事業者がどの役割を担うのか、しばらくは力関係の上下をつける争いなのかもしれません。

Facebookの投稿まとめ

https://www.facebook.com/groups/563064710384459/ に投稿していたものです。

1月21日

BLEのモジュール選択は、いろいろな要素を見て、最後はどれかに決めなければならないと思います。
太陽誘電のnRF51822のBLEモジュールには、9.6 x 12.9の普通のサイズと、5.1x11.3というとても小さいもの、2種類があります。
チップワンストップという日本の半導体のオンラインショップで、太陽誘電のBLEモジュールが100個単位であれば800円代になっています。
http://www.chip1stop.com/search.do…
BLEモジュールの価格の目安は、1つ5ドル、日本円で800円位が目安です。1個単位で買う場合は、個別に包装するなどの手間のぶん高くなり、何十万個も購入するなら、その分より安くなると思います。
100個単位は、そのちょうど中間、数量による価格の下げの恩恵がまずないところなので、800円台というのは、目を引きました。mouserをみても、なかなかこの価格帯はありません。

1月26日

Arduino Genuine 101 がRSコンポーネントに商品登録されていました。海外から4営業日で届くそうです。1つ¥4,748。
このボードは、フィジカルコンピューティングの分野で広く使われているArudinoでもありますが、ハードウェアそれ自体は、
-Intel® Curie™マイクロコントローラ搭載
-32ビットIntel® Quark™マイクロコントローラ
-384 kBのフラッシュメモリ, 80 kB SRAM
-DSPセンサハブ, 6軸コンボセンサ
と、ウエアラブルデバイスを作ることもできそうな、とてもリッチなハードウェアです。
このボードが、日本の技適を取得しているかはわかりませんが、BLEが搭載されています。また、このチップのOSは3月にはオープンソース化される予定とのことです。
スマートホンと連携するハードウェア、アプセサリのキーテクノロジーであるBLEは、IPv6あるいは6LowPANなどで、IoTのキーテクノロジーへとその勢力範囲を広げつつあります。実験用としても、手軽な価格で1枚単位で購入できるボードが登場することは、その盛り上がりを支える道具として、意味があるなと思います。

4月6日

LoRaとBLEに対応した無線モジュールがあったので、日本の技適は取得されていませんが、リンクをはりました。
http://www.lairdtech.com/products/rm1xx-lora-modules
LoRaは低データレートの無線通信規格で、仕様は https://www.lora-alliance.org サイトから入手ができます。いまのver1.0の仕様は1GHz以下のサブギガのいくつかの周波数が記述されているようです。
電波が届く範囲は周波数により決まります。BLEが使う2.4GHzでは家程度の範囲ですが、サブGHzではモジュール次第ですが通信範囲をkm単位に広げることも可能です。
スマートホンとの無線通信として強力なブランド力をもとに急速に普及しているBLEも、さらなる普及のためにIoT系の技術を取り込むなどの、次の大きな変化が来るようです。
また開発案件では、スマートホンとの連携にはBLEを使うが、製品それ自体の魅力を作るためにはBLEという規格の範囲では作れないために、2.4GHz帯の独自の無線通信機能を入れていくものも、出てくるようになりました。
無線通信は技術手段にすぎませんが、その手段の変化の速さを見ていると、BLEのアプせサリまたIoTという単語が、単なる流行語ではなく、実際に需要がありお金が動く分野になってきているのかなと思います。

4月29日

CypressがBroadcomのワイヤレス IoTビジネス事業と関連資産を5.5億ドル、約600億円で取得するそうです。
これには、BroadcomのWi-FI, BluetoothそしてZigbeeの製品と知財そしてWICEDブランドと開発者のエコシステムが含まれます。

5月7日

ATMEL社のBluetoothのチップおよびモジュールのプロダクトページです。
BTLC1000は、Cortex-M0、26MHz、ROM 128kB(うちユーザが利用できるのは96kB)、RAM 128kB、RX/TX 3mA(3.6V時)、電源電圧 1.8 to 4.3Vです。
リチウムイオンポリマー電池の満充電電圧に耐えそうなので、直結ができるのでしょうか。
http://www.atmel.com/produc…/wireless/bluetooth/default.aspx
モジュールは、MOUSERを見ると http://www.mouser.jp/Search/Refine.aspx… 1つ1400円くらいです。データシートをみるとTELECも取得しているようです。
Siliconlab、Cypressなど、小さなマイコンを提供している各社からBLE SoCが次々に発表されていますが、その時にあわせて半導体会社がモジュールも提供するようになっているので、便利な時代だなと思います。

6月17日

Nordicのサイトで、Segger SystemViewというツールが紹介されていました。
これは、SEGGER’s Real Time Transfer (RTT) https://www.segger.com/jlink-rtt.html の技術を使い、ファームウェアの処理内容をマイクロ秒単位でグラフィカルに表示する無償ツールだそうです。
Nordicの開発キットに同梱されているJ-Link LITE CortexMを使っていれば、フラッシュの書き込みには Serial Wire Debug interface (SWD) http://infocenter.arm.com/help/index.jsp… を使うと思います。RTTはSWD経由でprintfデバッグのメッセージを外部に取り出せてデバッグ用のシリアル端子が不要にできるので、私は開発によく使います。
マイクロ秒単位でイベントをグラフィカルに統合できるprintfデバッグの進化系と見ておけばいいのかなと思います。ユーザによるイベント定義もできるようですから、BLE系でよくある、フラッシュの読み書きや、I2Cでバスを専有してしまうセンサーを使っている時の、処理時間が間に合っているかの確認など、便利そうです。

9月15日

TI社からBLEとサブGHzの通信機能を1チップ化したCC1350が提供されています。価格は4.6ドルくらいです。
CC1350は 315-, 433-, 470-, 500-, 779-, 868-, 915-, 920-MHz および 2.4-GHz の ISM バンドに対応しています。
日本では、BLEと920MHz帯がワンチップ化されたものとみなしておけば、よいと思います。
Wi-SUNの物理層であるIEEE 802.15.4g、IP-Enabled Smart Objects
(6LoWPAN)、 Wireless M-Bus、 KNX Systems, Wi-SUN™ そしてTI独自のプロプライエタリなシステムに対応するそうです。
電波を出すものは電波法の技術認証が必要でモジュールが登場しなければ、なかなか試すことも一手間ですが、TI社のセンサータグを、この半導体を使い提供されるようです http://www.tij.co.jp/tool/jp/cc1350stk
これまでBLEはスマートホンと連携したアプセサリの分野を切り開いてきました。ただ2.4GHz帯を使うBLEでは、電波が届く距離がもっと長くなければ実用的ではない分野は、物理的に苦手としていました。またスマートメータなど、そもそも2.4GHz帯ではなく、サブGHzを使うシステムとの連携もできません。
いろいろと、使いみちがありそうです。
http://www.tij.co.jp/product/jp/CC1350

10月5日

Bluetooth Developer Studio 1.1 がリリースされました。
これは、BLEの開発を容易にするために、サービスやキャラクタリスティクスの定義と、プラグインを通じたソースコードの自動生成機能がある無償のツールです。
今回のリリースで、ATTレイヤのプロトコルアナライザ機能がついたそうです。Bluetooth Developer Stuidoと対象デバイスの間の通信を記録して、ATTレイヤでのやり取りを可視化してくれます。
この機能は、デバイスとBluetooth Developer Studioの間での通信の解析であって、スニファーではないことに注意が必要です。スニファーは、通信をしている2つのデバイスがやり取りしている無線通信を傍受して、その通信を解析するもので、BLEデバイスの開発では、デバッッグに使います。
今後はIPv6対応も含めた汎用のプロトコルアナライザとして機能を充実させていくのだろうと期待ができます。

https://blog.bluetooth.com/bluetooth-developer-studio-adds-packet-capture/

10月19日

NXPから、BLEと802.15.4(プロトコルはThread)両対応のチップが出ています。
2.4 GHzトランシーバーは、 BLEの FSK/GFSK と802.15.4の O-QPSK をサポート、ARM® Cortex®-M0+ CPU, up to 512 KB Flash and up to 128 KB SRAM。チップの価格は3ドル程度です。

http://www.nxp.com/products/microcontrollers-and-processors/arm-processors/kinetis-cortex-m-mcus/w-series-wireless-m0-plus-m4/kinetis-kw41z-2.4-ghz-dual-mode-ble-and-802.15.4-wireless-radio-microcontroller-mcu-based-on-arm-cortex-m0-plus-core:KW41Z

10月20日

シリコンラボからBLE及びサブGHzのSoCを乗せた評価ボードを、クラウド接続を売り文句に出しています。価格は36ドルです。
モバイルアプリ(ソースコードはGithubにあるとありますが、リンクは不明です)、データはFirebaseに保存、ReactJSのウェブフロント(ソースコードも公開とありますが、特にリンクはありません)があるそうです。
センサーは、加速度センサー、温度、UV、室内の空気の質センサーなどが使われています。電波法の技術適合はないようですから、日本国内で利用するには適切な環境で使う必要があると思います。
BLEのSoCでは各社がオープンな姿勢を打ち出していますが、BLEのデモンストレーションでは、スマートホンのアプリケーションが多く、ウェブフロントエンドの公開例はありません。
このシリコンラボのリソースは、バズワードとなったIoTのデモンストレーションのスタートに良いリソースかもしれません。

11/11

シリコンラボからBT4.2のSiPモジュールが登場しています。サイズは6.5mm角、Digikeyをみると価格は6ドルくらいのようです。
Cortex-M4、RAM/ROM 32K/256K。3.3VでDCDC有効がでもピーク電流は10mA程度と大きめです。
データシートを斜め読みすると、認証はこれから取得するようで、データシートにはCE/IC/FCC/TELECなどが空欄になっています。
アンテナ周囲のGNDを置かない制約だけではなく、GNDの面積がアンテナの利得に影響するため、モジュール自体が小さくても、制約に従い実装すると、基板の大きさは微妙になるかもしれません。

11/25

DigikeyにSamsungのBLEモおよびZigbee/Threadのモジュール 、それぞれARTIK 020/030が登場しています。
Cortex-M4 40MHz, 256kB フラッシュROM。モジュールには、Telecマークが印字されています。価格は5ドルくらいです。
これの開発ボードにシリコンラボのマークがあります。モジュールのスペックを見ても、シリコンラボのモジュールそのものなので、発売元をすげ替えたものなのかと思います。サムスン電子は、英CSRの事業を買収していたと思いますが。