わふうの人が書いてます。

iOSアプリケーション開発、BLEのファームウェアとハードウェア試作のフリーランスエンジニア。

O2OでのiBeacon活用のデザイン・パターン

O2O(オーツーオー)は、オンラインとオフラインの購買活動がそれぞれ連携/影響しあう、またオンラインでの活動が実店舗での購買活動に影響をすることを示す用語です。出典 http://www.sophia-it.com/content/O2O

ネットワークと常時同期するスマートフォンが普及した今日では、もはやオンラインとオフラインを区別する意味はありません。経済活動の主体となる個人を軸にすえれば、スマートフォンや実店舗は、購買の手続きや支払いの窓口や、受け取り場所といった手段にすぎません。

ここでは、iBeaconがO2Oでどのように活用できるか、また逆に、O2OでやりたいことにiBeaconが使えるか、を考えるうえで押さえたい項目を列挙します。

基礎知識

iBeaconはなにか、その原理とiOSでの振る舞いは、スライドを参照してください。

iBeaconは、Appleの登録商標で、領域と近接の検出技術をしめす言葉です。電波を出すビーコンがあり、iOSはビーコンの電波を監視して、ビーコンの領域に入った/出たをアプリケーションやパスブックに通知します。

iBeaconは単なる領域と近接の検出です。これを使いアプリケーションを作れば、
例えば決済やカタログ表示など、位置に紐付いたサービスを提供できます。

ビーコンはUUID(128ビットの識別子)、major番号(16ビットの符号なし整数)、そしてminor番号の情報を電波に乗せて、周囲に送信しつづけるものです。iOSのパスブックおよびアプリケーションは、ビーコンの監視にUUIDを必ず指定しなければなりません。つまり、ビーコンのUUIDを事前に知っていなければなりません。

また、ビーコンが多数同じ場所にあっても、互いの電波がぶつかったりして、ビーコン信号が検出できなくなることは、ほとんどありません(1つの場所に100個以上のビーコンがあれば、すこし衝突するかもしれませんが)。ですから、同じ場所に思い思いに多数のビーコンを配置しても、混信してビーコン信号が検出できなくなったりは、しません。

デザインパターン、その1

エリア

iBeaconは領域と近接の検出技術です。そのビーコンの配置と建物の構造を組み合わせます。

ゲートは、入り口の領域をビーコンで覆います。この入り口への出入りを検出できます。エリアは、どの領域にいるか、またどの領域からどの領域に移動したかを検出します。最後のスポットは、例えばレジの周囲でのみイベントを起こしたいときには、そのスポット領域を覆うようにビーコンを設置します。

ビーコンを出している時間

ビーコンの電池は、24時間電波を出し続けても、数年程度連続動作します。ですから、ビーコンは電波を出し続ける設定で、どこかに設置して利用します。ビーコンのハードウェアの内部にあるマイコンで、ファームウェアという小さなプログラムを入れることができます。ですから、ビーコンの発信を決まった時間に設定したり、あるいはいまビーコンを出したい/止めたい、という操作ができるビーコンも、作れます。

検出のタイミング

iOSがビーコンの電波を検出するタイミングは、3つあります。1つはロック画面が表示された瞬間です。例えばiPhoneをポケットから取り出して、ホームボタン/スリープボタンを押した瞬間に、ビーコンの電波をチェックします。2つめは、アプリケーションのバックグラウンド状態です。iPhoneの画面が表示していない間も、領域を監視し続けるアプリケーションが作れます。3つめは、アプリケーションのフォアグラウンド状態です。バックグラウンド状態で取れない、ビーコンとのおおよその距離(10m程度のばらつきがある)まで取得できます。

作用

ビーコンを検出した時に、iPhoneからユーザになにかしらの影響を与えられます。アプリケーションがバックグラウンドでサーバと通信するだけのように、ユーザにはなにも影響を与えないこともできます。ロック画面に通知を表示したり、電話着信のように音や振動をだすこともできます。またユーザが画面を見ている時であれば、画面の上に通知を表示したり、またアプリケーション自体が実行されているならば、画面に何かを表示することができます。

モチベーション

iBeaconの話題の多くは、売り込む側の人たちや大手流通を想定した、もっと儲かりますと主張する場面説明でうめつくされています。しかし、大切なのは、iBeaconを利用する側の動機です。例えば、ビーコンの領域に入った時に、割引クーポンを発行することができます。また、買い物の場面であれば、自分にあったサイズの商品がどれかをお知らせすることもできます。売り手が買い手に主張するほかに、ユーザ自身がやりたいことをできる場面も多くあります。例えば、牛乳を買おうとメモをしていれば、牛乳がどこにあるのか、教えてくれる仕組みも作れます。

デザインパターン、その2

表の目的、裏の目的

ユーザに、こう使ってくださいという説明と、その使いかたをすると副次的に得られる情報を別の用途につかうことも、規約とユーザの受け取り方や感情に問題がないならば、できるでしょう。例えば、広大なショッピングモールでお目当てのお店までナビゲーションを提供するアプリケーションがあったとします。どの経路を通ったかをサーバとやりとりしていれば、ユーザの移動経路はサーバ・ログに残るでしょう。そのログには、仕入れや売上計画を作る基礎データとして、解析する価値があるでしょう。また、ビーコンを利用した支払いやクーポンの利用履歴は、サーバに記録が残ります。いつ、だれが、なにを購入したかは、仕入れ計画や商品開発に役立つ貴重な情報です。

商品の性質

iBeaconとO2Oとを商品販売に活用する場合、その商品が、いつどこで購入できるものかで、ビーコンの活用方法が異なります。
例えば、工芸品や季節の果物など今この時しか購入できない一品物の商品は、その商品が欲しくて買いたい人と商品の出会いを作ることになるでしょう。
自社のオリジナルの商品群をもち、オンラインと実店舗それぞれで販売をしているならば、実店舗はショールームとして、商品を体験できる場に特化していくかもしれません。
また本やCDなど、どこで購入しても同じ商品が手に入るものならば、納品予定日と価格、そして故障対応などのアフターケアと、価格を比較して、たとえ目の前に商品があっても、別の場所で購入するかもしれません。
それぞれの場で、ビーコンの活用場面はあるでしょうが、その活用方法は異なるでしょう。

更新をかけるところ

パスブックをつかうにせよ、アプリケーションをつかうにせよ、実店舗と連携してコンテンツを更新していくことが重要です。その更新を、いつ、だれが行なうかは、2通りあります。チェーン展開をしている場合は、全体の運営を取り仕切る部署が行うでしょう。また、個別の店舗ごとに、あるいは現場の担当者の判断で、更新をかけたい場合もあります。

UUIDの所有/利用範囲

ショッピングモールなど、ビーコンを利用するがそのデータは一切外部にださず自社内部でのみ利用するならば、UUIDは自社内だけで運用します。決済のように、サービスの利用のためにビーコンを顧客店舗に設置する場合も、サービス提供会社自体がUUIDを管理し、外部に提供することはないでしょう。公共機関やイベント施設であれば、設備として設置されたビーコンを、第3者が利用できるようにルールを作るかもしれません。

デザインパターン、その3

動作環境

データが全てiPhoneにあるならば、ビーコンとアプリケーションのみで、ローカルで閉じた利用ができます。3GやWiFiが使えない場所や、WiFiが利用できない場所でiPod touchで運用したい場合には、これを選択します。またロギング系であれば、アプリケーションからクラウドに、データを送ります。コンテンツを更新するものであれば、クラウド側と通信をして、ローカルのデータを更新します。

購入と利用の流れ

O2Oという単語では、これは重要だと思うのですが、商品やサービスの購入のタイミングと利用するタイミング、あるいは購入から利用までの流れで、ビーコンの活用方法が異なります。実店舗は、目の前に商品があり、それに触れることができます。そして購入できます。もしもショールーム化した店舗であれば、実店舗で購入手続きを行い、宅配便で後日配送されます。航空券や宿泊施設は、購入と利用タイミングがずれます。オンラインなどの手段でまず購入して、実店舗で利用します。購入時に入力した情報と実店舗での利用者をひもづけるために、アプリケーションを使うならば、簡便にアプリケーションを表示するためにビーコンを利用するのもいいでしょう。

ペンと紙は強い

モバイル、あるいは自動化の仕組みがあっても、それを運営するのは人間です。
そして人間が理解できるものは、ペンと紙でできること、だと思います。

電車に乗る場合でも、スマートフォンで予約してICカードで入場する人がいる一方で、切符を窓口で購入して切符で入場する人もいるように、利用者視点での手段の提供が求められます。

デザインパターン、その0

ロック画面を表示した時に、iOSはビーコンをチェックします。実店舗にビーコンを設置しておくと、そのビーコンの周囲でロック画面を表示した時に、実店舗に該当するパスブックやアプリケーションをロック画面に表示させられます。今いる場所に紐付いた自然な表示方法として、これを活用できます。

たくさんあるパスやアプリケーションをいちいち起動するのは、大変な手間ですし、支払いのためにユーザがアプリケーションをレジ前で探していては、レジに長蛇の列ができてしまいます。

パスブックとアプリケーションの使い分け

パスブックとアプリケーションの使い分けは:

  • 1画面を表示するだけの機能ならばパスブック、その他の機能を提供するならアプリケーション。
  • ロック画面に、ビーコンがあれば表示すればよいパスブック、表示する/しないをiPhone内部で判断させたいならばアプリケーション。

とします。パスブックは、Appleの審査は不要で、電子メールなどで配布ができ、コンテンツの作成も楽で、安価です。アプリケーションは、任意の処理を盛り込めますが、AppStoreの審査をうけて一般配布ができます。開発費用がかかります。

心地よさと不快感

iBeaconの活用場面を考える時、ユーザに心地よい印象を持ってもらえるか、不快にならないか、を検証します。例えば、店舗の前を通過するだけで通知が表示されるものでは、通勤経路にそのお店があるたび通知が表示されます。これは、電子メールのスパムと同じ不快感を与えて、その店舗に悪印象をもつでしょう。

パスブックは、ロック画面を表示した時にビーコンを検出すると自動的に表示されるため、ビーコンの設置やパスブックの設定によっては、このスパムのような振る舞いをします。ビーコン配置の変更ができない場合は、パスブックではなくアプリケーションを使い、アプリケーション内部で通知を出す/出さないを判断する処理をいれるなどします。

他のビーコンとの比較

iBeacon以外に、音波や光を使うビーコンや、WiFiの電波を利用するビーコンがあります。それらとの長所短所を簡単にまとめます:

iBeaconの長所は、アプリケーションがフォアグラウンドになくてもビーコンを検出できる、ことです。iOSに統合されている強みです。

音波や光を使うビーコンは、マイクやカメラを使うために、ユーザが意識をしてアプリケーションを起動して、さらに読み取り操作を行わねばなりません。また音波は、殆どの人には聞き取れませんが、耳の良い人にはキーンという音が聞こえて不快感を与えることがあります。光は、室内の照明で影ができるように直進性が強く、周囲に一様に情報を拡散する光源の設置には手間がかかります。

WiFiを利用するビーコンは、AndroidとiOSの両方で利用でき、かつバックグラウンドでのビーコン検出も可能です。ただし、最近はWiFiの電波をバックグラウンドで検出するiOSアプリケーションは、AppStoreでリジェクトされるようです。iOSでは、iBeaconと比べて特段に優れた点はありませんが、Androidではビーコンとして今後も使えるでしょう。